怖いけど好きな映画ベストテン

約1年振りにシレッとブログを更新してみますよ。毎年恒例「男の魂に火をつけろ!」(id:washburn1975)さんの「映画ベストテン」企画に参加させていただきます。今年はお待ちかね「ホラー映画ベストテン」だ!

http://d.hatena.ne.jp/washburn1975/20121031

個人ルールとして「怖いけど大好き」な映画から選出させて頂きました。「好きだけどあんまり怖くない」とか「めっちゃ怖いけどあんまり好きじゃない」とかは除外。ではいきます。


1.『悪魔のいけにえ』(1974米/トビー・フーパー監督/マリリン・バーンズ、ガンナー・ハンセン主演)

言わずと知れたホラー映画の金字塔。もう冒頭の道路にアルマジロの死骸が転がってるシーンから不穏な空気が画面中を支配している。我らがレザーフェイスがドーン!と初登場して、金槌でボカーン!とやって、痙攣した若者をズルーッ!と引き摺って、重い鉄の扉をバーン!と閉めるシーンが最高。そのレザーフェイスとの長い長い追いかけっこの末、ようやくスタンドに逃げ込んで店員に助けを求められたと思ったら、実はキチガイ一家のお父様で…、という展開に心底絶望した事を覚えている(今思えば当然そうなるよねって展開だけど)。我が家の自室にポスターも貼っているし、DVDも廃盤品と再発のコンプリートBOXを持っているぐらい大好きだが、本当に怖いので滅多に観ない。


2.ゾンビ(1979米・伊/ジョージ・A・ロメロ監督/デビッド・エンゲケン・フォリー主演)

この映画が怖いのは「動きが遅い」のと「数が際限ない」ところ。ショッピングモールでのシークエンスなんかが顕著で、モール内での生活は、衣食住には困らないし、欲しい物は大抵手に入るしで、一見すればもの凄く楽しそうなんだけど、外に目を向けるとそこには、ゆらゆらと蠢く死者の群れが。単体の動きも遅いし単調なので「もしや逃げ切れるかも?」と思ってしまうのだが、その群れはどんどん増殖していき、ゆっくりと、しかし確実に生者を死へと導いていく。その緩やかな恐怖というか、徐々に死が迫っている圧迫感、閉塞感は絶望的でとても怖い。


3.イレイザーヘッド(1977米/デヴィッド・リンチ監督/ジャック・ナンス主演)

初めて観たのは、確か中学生だったか。地方局でテレビ放送されていたのを偶然観て、その訳の判らない展開と気味の悪い登場人物達(常人の発想とは思えない赤ん坊の造型の不気味さ!)、しかし、とても美しいモノクロの映像世界に目が離せず、合間にCMが入る度にホッと安堵の息をつき「よく判らんが、俺は今とんでもないものを観ている」と恐怖しながらも夢中になっていた。


4.レクイエム・フォー・ドリーム(2000米/ダーレン・アロノフスキー監督/ジャレッド・レトジェニファー・コネリーエレン・バースティン主演)

鑑賞中は自分の環境に置き換えて怖くなるし、鑑賞後はあまりの救いのなさにがっつり落ち込むし…というろくでもない映画。とくに後半の素直落下式DDT具合は半端なく、中でもエレン・バースティンが演じるお母ちゃんに降り掛かる悲惨なラストは本当に可哀想で怖い。ジェニファー・コネリーに降り掛かるラストはエロくて怖い(『饅頭怖い』的な意味で)。


5.ヘンリー(1992米/ジョン・マクノートン監督/マイケル・ルーカー主演)

淡々と、日常のルーチンワークのように大量殺人を犯すヘンリーの姿が理解不能で気味悪くて不愉快で、鑑賞後はかなり気が滅入った。直接的な殺人シーンはほとんどないのだが、充分に恐ろしい。でも冒頭に延々と映し出される幾人もの犠牲者の死体描写が奇妙に美しかったり。夥しい恐怖と狂気、そして、ほんの少しの美しさで作られた不思議な作品。


6.ノロイ(2005日/白石晃士監督/小林雅文(村木仁)主演)

個人的に日本映画においての恐怖表現の肝は殺人鬼やモンスターとかよりも、心霊や呪詛のような、土着的で我々の生活と地続きにあると感じさせるモノにあると思っている。そんな中でもタイトルに思い切り「呪い」と銘打った本作は、これらの持つ禍々しさをフェイクドキュメンタリーという手法でいやらしーく、しつこーく描いている、とても嫌怖い映画。レンタルしたDVDを夜中にひとりで鑑賞したので怖さが増幅された感もあるかな。これ映画館の大画面で観たら然程怖くなかったかも。テレビサイズのホラー映画。


7.キャリー(1976米/ブライアン・デ・パルマ監督/シシー・スペイセク主演)

映画も勿論、恐怖と哀しみに溢れた大傑作だが、それよりも何よりこのVHSビデオのジャケットが怖い。子供の頃、9歳上の兄(ホラー映画好き)の部屋にこのビデオが置いてあって「何だこの血まみれの女は!」と心底ビビったのだが、当時、兄の部屋にしかテレビゲームが無かったので、一生懸命ビデオジャケットを見ないようにしながらドラクエをやっていたのを覚えている。(ビデオに近づくのも怖かったので視界から隠せなかった) (てか、映画の内容にほとんど触れてない)


8.フェノミナ(1985伊/ダリオ・アルジェント監督/ジェニファー・コネリー主演)

まだ十代半ばの超絶美少女ジェニファー・コネリーがド変態監督ダリオ・アルジェントの魔の手によって監禁されたり、ゲロ吐かされたり、蛆虫風呂に入らせられたりと、色々と酷い目に遭う少女いじめ映画の最高峰。少女いじめ映画の最高峰!(重要な事なので2度言う)


9.地獄の門(1980伊/ルチオ・フルチ監督/クリストファー・ジョージ、カトリオーナ・マッコール主演)

正直、恐怖を通り越して呆気にとられる事も多いルチオ・フルチのやりすぎグロ映像大行進映画。これか『ビヨンド』か迷ったが、女の子が口から内臓をゲボゲボ吐き続けるシーン(無駄に長い)が未だに怖いのでこっち。


10.
子供の頃、人一倍恐がりだった俺に9歳上の兄(ホラー映画好き)は色々な怖い話を聞かせ、俺がビビる様子を楽しんでいたのだが、その中でも一番インパクトがあったのが小学三年生の頃に聞かされたこの話。

兄「あのな、◯◯(俺の名前)。アメリカには凄い映画があってな。タイトルが『サンド』ていう作品なんやけど。「サンド」ていうのは英語で「砂」のことや。お前も聞いた事あるやろ。で、ここで言う「砂」はテレビの砂嵐のことやねん。見た事あるやろ?夜中に何でか目え覚めて、ふとテレビ付けたら、画面が白黒のざらざらした感じになっててザーッてゆうてるだけところ。あれのことや。あれ気持ち悪いな。何かずーっと見てたら、普段テレビでは絶対見せられへんモンとか出てきそうで。 …で、この『サンド』いう映画な。これ自体は大した事ないホラー映画やねんけど、それの終わり、エンドマークが出た後に突然ザーッと砂嵐が流れて、その後に撮影後の様子が出てくるねん。最初は何かにこやかに話してんねんけど、途中で監督と主演の女優さんが映画の内容の事で大喧嘩しだすねんな。そんで、しまいには怒った監督が女優さんをナイフでホンマに殺してしまうところが写ってもうてんねんて!それで…」
俺「ぎゃー!お兄ちゃん怖い!もうやめてー!」

…いやまあ、今聞いたら「んな、アホな」で済ませれる話だが、何も知らない子供時代の俺には相当の衝撃だった。
んで、大人になってから色々と調べてみて行き着いたのがこの作品。

スナッフ(1976爾・米/マイケル&ロベルタ・フィンドレイ監督)

まあ、この手のエクスプロイテーション映画の話題になると、必ず取り上げられる有名作ですな。
おそらく「スナッフ」という単語ではイマイチ伝わりにくいだろうと考えて
スナッフ→スナ(ッフ)→砂→サンド
と判りやすいタイトルに改題したのだろう。兄なりの弟へ向けた配慮ですね。そんな優しさいらんけど。
因みに映画自体は観ていません。いまさら観てもガッカリするだけのような気もするし、恐怖の思い出として心の中に閉まっておこうと思います。



以上。ざっと見返してみると何だか子供の頃の怖かった記憶に引き摺られている部分が多いなー。
これ以外にもベストテンに入れたかったのは『ザ・チャイルド』とか『遊星からの物体X』とか『デビルズリジェクト』とか『シャイニング』とか『ミスト』とか『ポゼッション』とか『ハイテンション』とか『サンセット大通り』とか『CURE』とか『蜘蛛の瞳』(というか黒沢清の作品で怖くないのって『ニンゲン合格』ぐらいしか思い浮かばない。いっその事「黒沢清全般」でランキングさせたい程)とか、ホント挙げたら際限無くて面白いですね。そして、怖いですね。