私的シネマランキング2010 ベストテン

ライムスター宇多丸さんのTBSラジオ「ウィークエンドシャッフル」に倣って、今年劇場で鑑賞した映画全75本(リバイバル、特集上映を除く)をランキング形式で発表したいと思います。こちとら文章力や洞察力に欠けているので、質より量で勝負ってとこです。誰が興味あんだよってかんじですが、まあまあお付き合いください。長いっすよ。



では、早速ベストテンから。


1位 ローラーガールズ・ダイアリー

はい、もう全てが好きです。観れば必ず元気になれる大傑作。
既にあらゆる映画ブログで語りつくされていると思いますが、ストーリー、登場人物(出てくる女性は総じてタフで、男性は頼りない)演出、構成、音楽(『チャリエン』でも見せたドリュー監督のミーハー趣味が上手い具合に作用しています)やらなんやかんや、まあもうとにかく全てがキラキラと輝いている最高級の映画。スポ根、家族愛、恋愛、友情と青春映画に必要不可欠な要素が完璧に詰まっています。なるほど、これが青春というものなのか!?あー、うらやましい。尚且つ、その主人公が自分の居場所を見つける場所が「ローラーゲーム」という、おそらく世間的には見向きもされない、下手したら嘲笑やら侮蔑やらの的になる恐れもあるようなマイナーな競技だというところ。このドリューの着眼点が素晴らしい!だからこそ、楽しげに競技に打ち込むローラーガール達にウハウハなるんですよ。プロレス者も必見です。
主演のエレン・ペイジも彼女のキャリア史上で一番魅力を発揮しております。笑ったり、恋したり、へこんだり、泣いたりとコロコロ変わるエレン百面相を眺めてるだけでも幸せになれます。『テルマ&ルイーズ』とかでもありましたが、女の子が友達に「くーん、くーん」と犬の鳴き真似で甘えるのはなんであんなに可愛いんですかね。


2位 第9地区

エイリアンがやってきた。ヤア!ヤア!ヤア!
前述の『ローラーガールズ・ダイアリー』とは真逆で、こちらには気持ちの悪いエビ風味エイリアン、血みどろヴァイオレンス、すげーガジェットのウェポン、ちょうかっこいいパワードスーツと、ボンクラ映画に必要な要素がほとんど詰まっていますです(残念ながらセクシー要素だけ無い)もちろん表面的な世界観だけではなく、エイリアン達の難民キャンプの場所が南アフリカヨハネスブルグであるという舞台設定からもわかるように、アパルトヘイトによる人種隔離政策のメタファーである事は明らかでしょう。こういう風に一見、頭よさげな設定を一枚はさんでくれると、SFやホラー等のジャンルを下に見るような一部の層に「しょせん、SFなんて絵空事でしょ?」なんて事を言われた場合の防御壁になっていいですね。
主人公は終始、自分の為だけに行動しており、エイリアン難民に対する立ち振る舞いはぶっちゃけクズ野郎なんですが、そんな彼がクライマックスのギリギリで見せる行動、そして「(俺の)気が変わる前に(逃げろ)!!」という一般的な映画の主人公が絶対言わないであろう格好悪い台詞、そこからのクーバス大佐がロケットランチャードーン!ヴィカスがボロボロパワードスーツでキャッチ!!その姿に臆病小市民なおれの胸は熱く燃えあがります。


3位 息もできない

製作・監督・脚本・編集・主演をこなしたヤン・イクチュンの全身監督映画。これは彼自身の物語ではないのかと思ってしまった。彼は暴力を振るう代わりに、この作品を撮ったのではないか?そう思ってしまうくらいに、この作品には「これを撮らずにはいられない!語らずにはいられない!」という切実な思いが詰まっている気がしました。勝手で失礼極まりない想像だけど、彼にはこの作品を超える撮れないのではないかと思いました。冒頭のシーン、いきなり男だろうが女だろうが分け隔てなくぶん殴るジェンダーフリーな主人公の描写からラストまで連なる暴力描写に次ぐ暴力描写に敬遠してしまう人も多数いるかと思います。ある種、観る人を選ぶ映画かもしれません。ヒロインの女の子は常に仏頂面なパタリロみたいな顔をしているのですが、とあるシーンでみせる笑顔がとても魅力的で可愛く、瞬時に惚れそうになりました。


4位 トイストーリー3

大人から子供まで楽しめる間違いない大傑作。もし、普段あまり映画を観ない人に今年の映画で何か一本だけ薦めるならば今作を選びます。それくらいの高値安定型映画。「子供が大人になったらどーすんの?」という、子供向け映画としては出来ればスルーの方向でお願いしたいおもちゃ達の重大問題に、真摯に向き合い見事に幸福な結末を与えたピクサーに感服。あのラストには、本当に涙をこぼしそうになりました。最高のグランドフィナーレ。


5位 ぼくのエリ 200歳の少女

白と赤のエクスタシー!『天と地と』ですね。違いますね。
今年は良作揃いの吸血鬼映画の中でも頭一つ抜きんでていた作品。閉塞した郊外の町に住み、鬱屈した想いを抱えるオスカーの孤独。己に科せられた終わりの見えない運命に翻弄されて生き続けるエリの孤独。そして決して幸福な結末を迎える事の無い愛に殉じるホーカンの孤独。それらの想いが美しくも冷たい雪景色の中で残酷に重なり合う…まあ原作におけるホーカンの描写は異なるようですが。てか、ただのペドらしいですが。ラストのプールのシーンも大好きです。いじめっ子達にあんな事があった後のオスカーを見つめるエリの瞳。あんな事した後なのに、あの瞳!血みどろなのに、あの瞳!あんな事された後に、あんな優しい瞳で見つめられたら、そりゃ黙って着いていくしかないでしょ!そりゃ幸福な結末は迎えられないかもしれないですよ!でもいいんだよ!すいません取り乱しました!まあ総じて何が言いたいかというと美少女が血まみれでフゥーーッ!!って事です。
あとビジュアル的にはスポンティニアス・コンバッション描写、集団動物パニック描写も素晴らしかったですよ。ニャー。毛逆立たせてニャー。


6位 アンヴィル!夢を諦めきれない男たち

おれはHR/HMというジャンルに疎いので、アンヴィルというバンドについては詳しく知らなかったのですが、それでも彼らの姿には胸を熱くさせるものがありました。映画ならロックスターは死を選んで星になって終わればいいんでしょうが、現実はそうはいかない。辛い現実と対峙し、日常を生き続ける彼等は死んでいったカリスマ達の数億倍かっこいい。かっこわるくてかっこいい。


7位 渇き

コリアン吸血鬼映画。バンパイアをモチーフに、ホラー、アクション、コメディ、愛憎、エロス、ミステリー、宗教…等々のあらゆるジャンルを飛び交いつつ、やってる事は男女の痴話喧嘩というおもしろ映画。鑑賞中なぜか『愛のむきだし』を思い出していました。「笑って泣ける映画」という謳い文句はよく耳にしますが、「笑って怖がれて泣ける映画」というのは珍しいと思います。ラストの崖での無言のやり取りがとても印象的です。テジュ役のキム・オクビンも、なかなかのビッチでよろしかったです。


8位 インセプション

めちゃくちゃややこしい設定の話なのに、とてもわかりやすく自然なストーリー展開で、一発で理解させる監督の構成力はお見事。ビジュアルイメージも滅茶苦茶刺激的で面白かったのだが、後半でやや失速した感も。もっと夢の描写が独創的だったらと思うんだが、その辺にノーランさんの生真面目さがでた印象。ディカプリオの下に集う夢工場チームのキャスティングも、下手にビックネームを並べてない絶妙なバランス。いやしかしサマーに振られた優男(名前知らん)はエレン・ペイジとチュウができてうらやましいですな。


9位 キックアス

主人公のキックアスは狂言回しで、あくまで「リトルニキータ」「金髪の女星飛雄馬」ことヒットガールちゃんの哀しき殺戮マシーンっぷりに痺れる映画。アメコミヒーローを完全な正義の味方とは描かずに、「連続殺人犯と一緒で、妄想だけでは満足できない」なんて台詞で「ヒーローなんて基地外紙一重なんだぜ!!」と言いきっちゃてるのも素敵。ビッグダディを演じたニコラス・ケイジは『バッドルーテナント』と共に近年ベストアクト。


10位 十三人の刺客

なんといっても「みなごろし」のシーンね!ちゃんと最初にダルマ少女の描写を強烈なイメージとして心に引っかかるように執拗に描いてるので、彼女の書いた文字が、懐から出されるときに「うわっ!きたー!!」と最高の興奮を経験する事が出来る。今年の邦画ナンバーワン。そして、なんといっても稲垣吾郎の生涯ナンバーワンのベストアクト。レイプ!犬食い!首サッカー!最狂ヒールの誕生ですよ。さすが女性警官を轢いたやつは違うぜ!


つづいて11位以下の発表。